69バーツ(約320円)。
これは、日本を愛するタイ人が作る『Samuri Ramen』で、あなたの舌が体験する“異文化ショック”の価格です。
はじめに:なぜ、私たちは「タイ式日本食」に惹かれるのか?
タイには日本食があふれている。日本人経営のガチ店から、タイ人オーナーのローカル店まで。今回向かったのは、その中でも特に異彩を放つ一軒、その名も『Samuri Ramen』。
「こわいものみたさ」と「ワンチャン、隠れた名店かも?」という、背反する好奇心を抱えながら暖簾をくぐる。
結論から言うと、この店は期待を裏切らなかった。ただし、それは「日本のラーメン」としての期待ではなく、「タイ人が解釈した日本のソウルフード」としての期待、という意味で。
今回は、全4種類のラーメンを実食。タイの若者の間でひそかに話題の、この69バーツラーメンの真実に迫ります。
1.【共通点】タイラーメンの「譲れないこだわり」と「気になるバケツ」
まず、全4種のラーメンに共通する、タイローカルラーメンの”個性”を見ていこう。
①麺:予想外の「もちもち」クオリティ
麺は、多分スーパーで手に入る市販品。だけど、これが意外にももちもちで美味い。ただ、日本人としては目を疑ったのが、麺を湯がいているのか、一旦バケツにINしている光景。
いや、不衛生ってことじゃなくて、ローカル店のオペレーションのリアル。このフリーダムさがタイなんだ、と妙に納得してしまった。
②卵:譲れない、ただの「ゆでたまご」の壁
味玉? 半熟? そんな概念はない。全品、固ゆでのシンプルなゆでたまごがトッピングされている。
これはタイ人経営ラーメンの「あるある」だ。逆に、この時点で「この店のルーツは日本ではない」という確信が持てる。彼らにとって、ラーメンの卵は「茹でて乗せるもの」なのだ。
③具材とスープ:「レタス in ラーメン」の謎とぬるさ
具材はレタスとチャーシュー。レタスは、見た目の彩り要員だろうが、ラーメンにレタス…。これもタイではありがちなのは、やはり8番らーめんの影響なのか、しかしながら8番らーめんと違って印象は薄い。チャーシューも、特筆すべきことはない。
そしてスープ。全体的にだしが効いておらず、コクがない。そして何より…ぬるい。
これはタイ人が熱々のスープをあまり好まない文化(すぐ冷まして食べる)から来ているのだろう。日本の「アツアツ命」とは異なる、タイの食文化が垣間見える瞬間だ。
2.【実食】全4種コンプリート!「Samuri Ramen」の四天王
さあ、いよいよ本命のレポートだ。
① 醤油ラーメン:「めんつゆ?」疑惑の甘醤油スープ
「醤油ラーメンはよく『日本の国民食の基本』だと言われます。しかし、この一杯は、その定義を根底から覆しました。」
一口飲んで確信。これは、想像通りの「甘いスープ」だ。ラーメンの醤油味というより、そばやうどんのめんつゆに近い、あるいはタイ料理の甘い調味料が入っているのか…。日本にはない、まさに異文化の味。これはこれでありかもしれないが、我々の知る醤油ラーメンではなかった。
② 🏆イチオシ!とんこつラーメン:奇跡の「豚骨」着地
4つ食べた中で、まさかの「一番美味しかった」のがこれ!
だしは弱いが、ちゃんと豚骨の香りと風味が出ている。スープに奥行きはないものの、「日本の豚骨スープの味」に着地していることに驚きを隠せない。タイ人シェフ、もしかして…豚骨だけはYouTubeで研究したのか?あるいは、シンプルに市販か。
③ ざるラーメン:シンプルisベストな「タイレベルの美味しさ」
タイの庶民派ラーメンチェーン『8番らーめん』から広まったとされる「ざるラーメン」。メニューの構成上、手間がかからずタイ人にとって受け入れられやすいのだろう。
感想は、「まあ、タイレベルに美味しかったです。」
つけ汁も麺も、ごくシンプル。日本のつけ麺とは比べるべくもないが、タイの蒸し暑い気候で、冷たい麺を食べたいというニーズには完璧に応えている。
④ トムヤムラーメン:もはや「創作料理」として楽しむべし
日本のラーメンと比較できない枠。だしは薄いが、トムヤムの酸味と辛味が加わることで、「タイの麺料理」として成立している。
これは「ラーメン」ではなく、タイの食文化が日本の器と麺を借りて生み出した、新しい「トムヤム・ヌードル」なのだ。日本のラーメンの常識を捨てれば、純粋に楽しめる。
結論:69バーツの「侍ラーメン」は、究極のコスパと文化体験だ
値段は驚きの69バーツ(約320円)。
「『好奇心』。これが、この侍ラーメンを食べる人の心を最もよく体現する言葉です」
日本の本格的なラーメン店が200〜300バーツする中、この店は圧倒的なタイ価格で勝負している。
これは「日本のラーメン」ではない。タイ人が作る「タイのラーメン」だ。
異文化が交差する、その曖昧な境界線を楽しむ。想像通りの「惜しさ」と、たまに見せる「健闘」が、「やっぱタイ好きだわ」と思わせてくれる、究極のローカルエンターテイメント体験でした。
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